自律心を育てる

昔、幼稚園教育要領作成に関わった大学の先生から、次のようなお話をお伺いしたことがありました。それは、幼児期に育てるべき心は次の5つだよというお話です。「自立心、愛情、自律心、信頼感、有能感」です。
どれも大切な心ですが、今回は「自律心」について考えてみたいと思います。
自律心を育てることは、この社会の中で生きていくためには必要不可欠です。本能の赴くままに、自分のやりたい放題をやっていては、この社会の秩序を乱し、多くの人々の平穏で幸せな生活を脅かす迷惑な存在とみなされ、現実社会から隔離されたりしてしまいます。
これは極端な話ですが、そこまでいかなくとも、自分がよりいっそう人間らしく生きていくために、自分が向上することに喜びを見出し、さらなる大きな目的を達成するために努力したりがまんしたりする力を育てることは、幼児期の教育において、とても大切です。


「こんな子に育ってほしい」、その尊い思いはどの親にもあり、すばらしいことなのですが、残念ながらそのための手段や方法がその子どもに合っていなかったりすることで、心のすれ違いが起こり、よい親子関係の中で自律心をそだてることが難しくなったりする場合があります。
それでは、どのようにすればよいかを考えていきたいと思います。
まず、小さな子どもに言葉を使ってで理屈で教え込もうとしても大変に困難であることがあります。どうして、お母様が一生懸命子どもに説明しても子どもは分かってくれないのでしょうか。
言葉を使わないと、伝えたり教えたりすることも難しいし、言葉を使うとどこまで理解してくれているのか分からないし、いったいどうすればいいのですかと質問されてしまいそうですね。
相手に自分の思いが伝わるということはどういうことかということを考えてみる必要がありますし、言語社会での生活があまり経験のない幼児に対してどのようなコミュニケーションの手段が有効かということも考えなければなりません。
また、子どもたちに身につけさせたい自律心というものは、一体どういうものなのかということが伝えようとしている大人にしっかりと理解されていないと、正しく育てることができなくなるおそれもあります。
こんな風に考えていくと、自律心を身につけさせようと考えている時、そのために必要な準備がどんどん広がっていくことが分かります。逆から考えれば、自律心自体が、たくさんの考えや手段方法、世の中のあり方やその時代に人々の考えによって成り立っている事が見えてきます。
それでは具体的に、子どもに自律心を育てさせるための援助については、今後徐々にお伝えしていきたいと思います。