体力調査と体格
近年、子どもの体力調査から、その能力が落ちてきている事が報告されています。自動車などの輸送手段を使うことにより、また、家の近くでは安心して遊べる場所が少ないため、ゲームで遊ぶ時間が増えている事なども要因の一つと考えられます。
日頃から、体の発達と心の発達と知能の発達は密接に関わりあっている、いやむしろそうでなければ発達しにくいのではと発言している身としては、いささか寂しい話です。
脳は、たくさんの酸素と栄養を必要とする人間活動の中枢をなす場所です。循環器系や内臓の働きは運動に支えられていますから、しっかりと栄養を取り適度な運動をすることは、快適な脳の活動のためには必要不可欠です。
不安定で、必要電流ぎりぎりの電源では、いくら優秀なコンピューターでもその性能を満足に発揮できないことに似ています。
さて、さる論説によると、筋肉の力はその二乗に比例するとされておりました。筋肉が長ければ、また太ければ、強い力が発揮できることは容易に想像できます。大きいほうが強いですよね。
ところが、調査によると子どもの体格(身長、体重など)は、大きくなっているのに、持久力や瞬発力が落ちてきています。その論説では、気力も影響していると述べていました。つまり、気力は力を引き出す原動力になっていると言うことです。ハンマー投げの室伏選手や、気力を出し活躍するスポーツ選手の例を挙げていました。
なるほどなるほど、うなづけますね。やる気がなければ力が出ないのは当たり前ですね。でも、やりたくもないことをやれと言われても、気力を出してがんばれと言われても、それは無理な相談ですね。
脳も筋肉と同じ人間の身体を支える臓器の一つです。人間の身体の様々な部分は、大人になれば別れていてそれぞれの働きをしていますが、もともとはたった一つの受精卵から始まっています。起源は同じですね。.
だとすれば、脳も気力が充実すれば、さらに大きな力が出るのではと考えてしまいます。然りです。そのとおり。遊びの中で子ども達はより楽しく遊ぶために知恵を絞りながら活動しています。その時に発達に必要な経験を積んでいます。不自由だからこそ、それを解決するための方法を考えたり、代替のものを見立てて遊んだりします。
気力、やる気に身体も頭もコントロールされています。つまり心です。心は言葉で伝えても、理屈で言い含めても育ちにくいものです。滝川一廣先生は、心を「私たちは日々、ものごとを知ったり考えたり感じたり意志しながら生きている。こういう体験世界を一括りにして「こころ」と呼ぶ習わしにしている」と述べています。
つまり、体験が心を育てるとも言えます。私たちは、論理的に分析的に考えすぎたため、それに合わないもの(全体的に捉えなければならない発達や心)をきちんと見る目を忘れてしまっているかもしれません。理屈や論理で組み立てられた文明も生きていくためには快適で便利ですが、その基本となる心の発達が何をおいても大切だと考えます。