努力しようとする心を育てる援助

努力しようとする心を育てることは、人生をより実りあるものにするために大切です。努力しようとする力をなんとか身につけさせたい、前向きに生きる人間に育てたいと思うのは、誰でも同じです。
でも、周りが一生懸命になっても、子どもの心に努力する力が育つわけではありません。それはなぜかというと、努力する心は(大抵のほかの心もそうですが)、子どもの心の中から育つからです。
外から、頑張りなさいとか、ごほうびでつったりしても、なかなか思い通りにいかないものです。それではどうしたらよいのでしょうか。
子どもが集中できるものに取り組むことが大切かと思います。それは何かというと、子どもの普段の生活や遊びの中にある集中して取り組んでいるものがヒントです。大人が集中してほしいものではなくて、子ども自身が集中したいものであることが大切です。


幼児期の育ちにおいて「あそび」が大切であるといわれているのは、様々なことがらに出会うことができることと、自分のペースで様々なものや事柄に出会うことができるからです。
何か一つ好きなものができると、子どもはそれに集中して取り組みます。たとえば、もうそろそろ自転車に乗ってほしいと思っているのに、三輪車ばっかり乗っている。そこで、自転車に乗る練習をさせようと大人が思っても、子どもはまだ不安があり、自分からやってみようと前向きになかなか取り組んでくれません。
少し我慢して、三輪車を思いっきりやらせていると、ペダルをこぐ感覚や体重を乗せてハンドルを操作しながらカーブを回る、などを自然に体得していきます。十分に三輪車を乗りこなすことができるようになると、自転車もやってみようかなという気持ちが湧いてきたりします。もちろん個人差がありますが。
あるいは、虫探しに一生懸命になる。あそこにいるかな、ここにいるかな。子ども達は友だちがやっているのを見て真似したり試したりして頑張ります。そして、自分の力で発見し捕まえたときの喜びは、大きな感動となって心に残ります。
たくさん興味関心のあるものに取り組むと、自然に一生懸命やる姿が発揮されますから、なにものかに集中して取り組むことが苦ではなくなります。
逆に、やらせている場合は、あまり気乗りのしないものであると、そのことが嫌いになってしまい、本当は大事なものであるのに、子どもにとっては苦手なものになってしまう恐れもあります。嫌だったけれど、頑張ったらできた、という喜びを感じてそのことが好きになることもありますが、確率的には低いのではないのでしょうか。
こうすればよいという方法は、実はありません。大切なことは子どもの心を感じながら、子どもが有意義な経験となるような援助をすることです。引っ張り上げようとしすぎずに、子どもの心に添った援助が大切ですね。