目に見えるものを動かすものは?

「空に浮かぶ雲は、自分で動いているのではなくて風が動かしている」
「初夏の美しい木々の緑の葉は、水が作用している」
中日新聞の文化欄に、詩人であり画家の加島祥造先生が、「老子に学ぶ生き方」という文章の中で書いてみえました。
私たち凡人は、目に見えるもの、表面的なものについつい目を奪われ、その元にある本当の理由や大切なものを考えたりせずに、自分本位な解釈で身の回りのものや、子どもの心を決め付けてしまっているのかもしれないと、考えさせられました。
また、車を運転するときに、すぐ近くを見て運転しているとフラフラとしてしまうが、遠くを見ながら運転するとまっすぐに走れるということも述べてみえました。
子育てに置き換えてみると、真に示唆に富んだ言葉だと思われます。


子どもの今ある姿は、子どもの心の現われです。たとえば、お話を静かに聞いてほしいというときに、隣の子とおしゃべりしてしまうのは、先生の言うことを聞けない悪い子かというと、そうではありませんね。先生のお話よりも、もっと興味関心を引くものがあるから、聞けないだけですね。
そもそも、大人の話を子どもは聞かなければならないということ自体が絶対的なものではないですね。子どもは大人の話を聞かなければならないけれど、大人は子どもの話を聞いてくれないというのは、いかにも不公平ですね。
その時の子どもの心のなかにあるものをきちんと理解してあげれば、子どもは本心を大人に見せてくれるようになります。
「・・・・ねばならない」「・・・であるべきである」という一方的な押し付けは、前述の雲が動くのを見ることはあるが、それを動かしている風のことにまで考えが及んでいるとはいえません。
また、自然の一部である人間(特に子どもは自然に近い状態)を、理屈で説明しようとしたり、論理で丸め込もうとするところにそもそもの過ちがあるのかもしれません。
子ども達にこんな人間に育って欲しい、こんな生き方をして幸せに生きる人間に育って欲しいと、10年後、20年後の姿に思いを馳せながら、今をともに歩むことが幼児の教育については特に大切なことと思われます。
まさしく、遠くに目標を定め今を生きる。今は、必ず遠くの行く末に向かってまっすぐ進んでいる。そういった真摯な姿勢が大切だと思われます。