発達を表す指標について

子どもが、今までできなかったことができるようになったり、新しい言葉をしゃべっていたりすると、成長したなぁ、発達したんだね、と思えることが多いようです。
目に見えるところから発達を判断することは、確かなように思われます。昭和40年に出版された津守真先生(磯部景子先生共著)の「乳幼児精神発達診断法」(大日本図書株式会社)においては、幼児の精神発達の過程を、主として幼稚園における生活場面に即して明らかにすることを試みています。
この本は、平成14年に第25刷が発行されており、長年にわたり日本の社会で受け入れられ、あるいは研究の資料として使われてきたことが伺えます。
大切なことは、精神発達の過程を明らかにすると述べられているように、子どもの精神発達の所産が、目の前の子どもの言動となって現れているということです。
できるから良い、できないから劣っているのではなく、その子どもの発達が今その過程であるということを認識するための、一つの指標にしか過ぎないということを抑えておく必要がありますね。


考えなければいけないことは、できるということは発達していると考え、
発達を見る項目を練習してできるようにすることが、子どもの発達援助である
と、短絡的に考えてしまうことです。
たとえば、4歳6ヶ月で、「はさみで、簡単な形を切り抜く」という項目があります。この項目は、男女とも3歳半で60%に達し、女児は3歳半から60%で安定するが、男児は4歳半になって安定する。80%以上になるのは女児は4歳半、男児は5歳である」と、書かれています。
3歳半でできるようになれば、普通で安心だわ、と考えてしまうところはやむを得ないとは思いますが、4歳になってもまだやろうとしないので、紙とはさみを持ってきて、これを切るまでおやつはお預けよ(たとえばですよ)と言ってしまっていたとしたら、それでできたとしても、精神的に発達したかどうかは怪しいものです。
すなわち、形を切り抜くことが頭の中でイメージされ、予想される結果を頭に描きながら、その活動を楽しむという精神活動の結果としての切抜きであることが大切なわけです。
私たちは、子どもが何時発達した姿を見せてくれるか分かりません。今生きている、そして活動している、その結果として発達した姿を見せてくれるのだとわかってはいても、そのいつかが何時来るのか、本当に来るのか心配で、ついやらせてしまうというようなこともあるかもしれません。
でもね、おかあさん、おとうさん。しっかり成長してくれるということを信じ、我が子のよりよい成長のために、かいがいしく身のまわりの世話をしてくれるのは、おかあさん、おとうさんしかいないのです。信じてあげてください。子ども達は、今、育とうとしています。
付け刃的な発想に振り回されずに、地道に毎日の生活の中で、成長に必要な経験を積み重ねていって欲しいものですね。