自尊感情を育てましょう Ⅲ

9月にご紹介しました東海大学の近藤 卓先生を愛知県私立幼稚園連盟の園長主任研修にお招きし、講師としてご講演いただきました。
キーワードは自尊感情です。自分に対する信頼感や、自分の存在が周りの人から善として認められていて、それゆえ自信を持って生きていける心のバックボーンみたいなものと考えてよいでしょうか。
これを失うことは、自分が生きている価値がない、生きるに値しない存在だと卑下することにつながり、自暴自棄になったり最悪の場合は死を選んでしまったりします。
どの命もどの命もすばらしいものです。
この世に、いらない命はありません。
今、生きている大切な命を守り、自分の幸せはもちろんのこと、人をも幸せにしていける命に育つことができたならば、光り輝くことができるでしょう。


いわゆる非行に走る子ども達、いじめにかかわる子ども達の多くが、その存在をきちんと認められず、どうせ自分なんかという気持ちであることが多いように思われます。自分の命を大切にできないことは、とても悲しいことですね。
人間の発達が、心の成長が、周りとの関係でなされていくことから考えると、大人たちの思い通りでない子ども達を非難することばかりでは、そんな悩み苦しむ子ども達の心を救うことはできません。
よく、人を変えるためには自分が変わらなければならないと言われていますが、心の発達から考えると当然と言うことになります。肉体的な発達は、遺伝子にプログラムされていますが、精神的な発達は環境とのかかわりにおいてなされます。しかも、発達進化と言うよりも、適応と言ったほうがよいのかもしれません。適応と考えるならば、いかに周りの人的環境が精神発達に大切かと言うことが分かります。
自尊感情には2種類あると近藤先生は言います。
一つは、基本的自尊感情です。もう、ただ生きていてくれるだけでいい、そのままのおまえでいいんだよ、と今あるありのままの子どもの姿を丸ごと受け止めてもらっていて安心して生きている状態です。周りの大人たちから愛され認められ育てられることが必要です。
もう一つは、社会的自尊感情です。人と比べて自分が優れている。社会の中で自分の存在が大きく、一目置かれたりしている。そのため、安定して社会生活を送ることができる。
ところが、社会的自尊感情は、比較や競争によって得られるものですから、いつか負けることがありますから、そのときに大きなダメージを被ります。でも、基本的自尊感情が大きく育っていれば、自分を見失うことなく、立ち直ることができますが、そうでないときは危険な状態になってしまいます。
その基本的自尊感情を育てるのが、乳幼児期です。
自分の命が尊いと言うことをきちんと分かっている子どもは、自分の命はもちろんのこと、他人の命も大切にします。自分が自分の命を大切と思うのと同じように、人も自分の命のことを大切に思っていると、人の気持ちを推し量ることができるからです。
子ども達を育てるカギは、やはり心です。様々な知識や技術を身につけることも大切な教育ですが、それらを人々の幸せに役立つように使おうとする人間的な心が育っていなければ、恐ろしいことになってしまいます。
心の発達は目に見えにくいし、援助もしにくいものです。でも、子ども達が幸せに生きていく人間になるためには、どうしても温かく大きく育てておいてあげたいものですね。