自尊感情を育てましょう Ⅱ
自尊感情が大切なのは分かりますが、では、どのようにしたらそれをうまく育てることができるのか。それが問題です。
東海大学文学部心理・社会学科教授の近藤卓先生は、9月9日付中日新聞のCULTURE欄で、次のように述べておられます。
「スクールカウンセラーとしての経験から、共有体験には大変な力があることを実感している」と。
自分も含め、様々な身近な人々の育ちを考えたとき、教えてもらったからとか、勉強して学んだから、自分の命が大事だと分かったという人は少ないように思えます。それは、やはり感じるもの、論理的な方法でなく、情操的な方法で感じ育てられてきたのではないかと考えられます。
また、先生は「感情の共有をすることが重要である」とも述べておられます。
文章の最後に、「感情の共有をすることによって、はじめてその体験がその人の心の底に定着し、自尊感情の強化に役立つのである」と結んでおられます。
子どもを育てるとき、その心の基礎を培う、感情の根っこを耕す、等様々な文言でその大切さが述べられていますが、それは、現代になって分かった新しい方法ではなく、永い人間の歴史の中で育まれ培われてきたその子育て方法にたくさんのヒントが隠されているのではないでしょうか?
なんとなれば、過去の子育てのおかげで私たちも育てられて今ここに存在するという事実です。たくさんの経験の中で洗練されてきた子育ても含む文化的な遺産は、大変貴重なものです。おじいさんやおばあさんのさまざまな知恵を今一度検証してみることが大切なのかもしれませんね。
この短い文面では、近藤卓先生の意図するところを十分にお伝えできませんし、拙文とのかねあいで誤解される向きもあるかもしれません。是非、先生の著書から先生の思いや考えをきちんと理解していただくことをお勧め申し上げます。
※近藤卓先生
東京大学大学院教育学研究科博士課程満期退学。臨床心理士。現職は上述のもののほかに、子どものいのちの教育研究会会長、日本学校メンタルヘルス学会理事長。『「いのち」の大切さがわかる子に』(PHP研究所)『いのちの教育』(実業之日本社)『いのちを学ぶ・いのちを教える』(大修館書店)など。
中日新聞社様にも記事を引用させていただきましたお礼を申し上げます。