ルールを作って生活を整える

年長児は、標識探検に園の近所を回り、様々な標識を見つけてきました。道路標識に限らず、我々人間は様々なメッセージを記号や絵を使って伝えようとしていることに、子ども達は気がつきました。
そして、交通公園で、標識に従って(?)実際に自転車や、電動自動車、あるいは歩いてみて標識の大切さを学んできました。そこで、みんなで園の中ではどうかと担任が投げかけたところ、様々な意見が出ました。それでは、標識を作ってみようということになり、自分たちなりに考えて標識を作り、園内のあちらこちらに貼りました。園内標識1.jpg上の写真のものはカーテンにぶら下がらないでという内容です。カーテンが壊れないように気をつけてくれるようになりました。舞台の上でも、遊ばない約束にはなっていましたが・・・。
でも、自分たちで考えて、標識を立てたら、見事にきちんと守って生活できるようになりました。


「ルールは、守るためにある」当たり前ですが、その前に「生活を便利に、楽しくするために必要」という事が理解できていないと、押し付けられた感だけが残ります。
自分たちで、よりよい生活をするために考え創り出したルールは生きたルールです。きちんと子ども達は守ります。これは、外に行くときには、帽子をかぶろうという内容です。園内標識2.jpg廊下を走ってぶつかって痛い思いをしたり、危ない思いをした子どもが作りました。(廊下を走らない)園内標識3.jpg階段の降り口に貼ってあったのは「右側を通りましょう」というものでした。階段を降りる人と登る人とが交錯したことがあったのでしょう。給食用のエレベーターにも、ボタンを押して遊ばないという標識が貼ってありました。遊ぶと危ないからやめてねと先生から注意されたり、そのような場面を目撃した子どもが作ったのでしょう。園内標識4.jpg子ども達が集まり、話し合う中で、様々な経験から様々な意見が出て、多くのことを学びあうことができました。発達はかかわりの中でなされる。これはこれまでの様々な研究から当然とされている知見です。先生と子どもとの関係のほかに、子ども達同士の豊かな関わりが、子どもの育ちに大きな影響を与えています。
ルールというものは、みんなが快適に暮らしていくために出来上がってきたものです。ですから、ルールを守ることを教えることも大切なのですが、ルールとは一体何なのかを子どもなりにイメージできるようにしてあげる必要があります。
道徳やマナーといったものから、様々な法令、憲法まで、なぜそれがあるのかあるとどうなるのか、プラスの面もあるけれどマイナスの面もあるよ、といった根本的なところまで考えられるようにするためには、このような入り方が適切かと考えます。
言葉や文字の発達にしても、文字のルーツ、標識の意義、コミュニケーションしたいと思う心、文化の発展に近い順序で、興味関心の持てる、面白そうと思う活動や経験の中から育んでいく必要があります。
このように子どもの学びは、複雑に関連しあった活動や考え、思いの中から出来上がってきます。そして3年間通して、先生や子ども達の雰囲気の中で醸成されるものでもあります。
男の子たちが、ヘッドランプをつけ何やらごっこ遊びを楽しんでいます。トンネル工事でもやっているのでしょうか。園内標識5.jpgこんなことを一緒にやりながら、一緒に楽しみ心と心を通わせていっています。心の通う友達ができると、園生活がさらに楽しくなり、自ら関わる活動が増え、自分で成長する機会が増えます。また、大好きな友達であるがゆえに、大切にします。優しさを出したり思いやったり助け合ったりする力も育ちます。
女の子が逃げてきました。先生の後ろに隠れています。園内標識6.jpg男の子に追いかけられているのですが、追いかけるほうも遊びで、追いかけられるほうも遊びでやっています。ぎりぎりのところで逃げたり、つかまったりのスリルを楽しんでいるようです。何度も女の子たちが男の子の近くに行き、キャーッといっては逃げてくることを繰り返していました。そのこと自体が楽しいのですね。
何気ない生活の一こまの中に、実は子どもの発達に大切なものがたくさん隠されています。子どもの活動の中に隠されている発達の芽を読み取り、適切な援助をする力が教師には求められます。