学力向上のための原動力は?
「百ます計算」で有名になった陰山英雄先生(元広島県尾道市土堂小学校長:現立命館小学校副校長)が、2006年9月号の中央公論の中での討論で、
「正しい生活習慣が学力を伸ばす」
「百ます計算」よりも「早寝・早起き・朝御飯」
と述べてみえます。お読みになった方も見えるかもしれません。最近では、国を挙げて「早寝・早起き・朝御飯」が推奨されています。
陰山先生は、これが幸福を感じる力を人間に与えるから大切だと述べてみえます。この主張には、多くの人が賛同されることだと思います。生活習慣を整えて、元気に生きる姿勢を作ってあげることが、子どもの成長発達のために大切な援助になりますね。
特に幼児期においては、できる力よりもやろうとする意欲を養うことに力点を置いています。今できることはもちろん尊いことなのですが、将来にわたって、自ら伸びていく力はやろうとする意欲なしには考えられません。
さて、ここで問題なのは学力があれば幸せになれるかということです。学力はないよりあった方がよいのでしょうが、幸せになるための手段にすぎません。これを目的にしてしまうと、悲劇が起こることになってしまいます。
人として生きることとはどういうことか、幸せとは一体どのようなことなのか、そのようなことが子どものベースにないと、本当に幸せな人生を創造することは難しいのではないでしょうか。
きちんとある人は少ないかもしれませんが、そのようなことを考えながら生きている事は大切なことだと思われます。そのようなものは、考えなさいと言われて考えさせられても、なかなかよい答えが出るものではありません。
人生を重ねて、苦労をしたり、悲しい思いをしたり、山あり谷ありの人生を経験する中で、ふと「自分は、どうして生きているんだろう」と立ち止まることが出てきます。そこで立ち止まって、一度ゆっくり考え直してみる。そして決断し、一段と有意義な人生になっていくような気がします。
こうすれば幸せになれる、なんていう公式はありません。社会の変化に連れて価値観も変わり、幸せになる為に必要な力も変わってきます。もう既に、大きく変わりつつあることに気がついている人も多いかと思います。
だからこそ、そのようなことを自分で感じ、考え、行動し、その結果について責任を持つ、という真に自立した人間に育ててあげることが、子どもが幸せに生きていくためのよりよい援助ではないかと思います。